実況中継:近代英語の精華『不思議の国のアリス』を英々辞典PODとLDOCEで精読して行く!

実況中継:近代英語の精華『不思議の国のアリス
を英々辞典PODとLDOCEで精読して行く! 下笠徳次著

実況中継:近代英語の精華『不思議の国のアリス』を英々辞典PODとLDOCEで精読して行く!    下笠徳次著

 日本ルイス・キャロル協会という組織があります。アリスの翻訳に関してご相談したら、色々と文献を教えてくださいましたが、その中に、この本がありました。

 自費出版なので、通常ルートでは購入できません。著者に直接ご連絡して、本を送っていただきました。

 実況中継 という不思議なタイトルの本です。予想通り、著者の下笠先生の、愛情あふれる講義を、まさに、聴講している感じになります。下笠先生は、普段は、大学で教えておられましたが、この講義は、「アリスを好きな生徒がいる。授業をしてくれないか」と頼まれて、ある高校で教えた内容がもとになっています。

 世の中には、いろんな勉強スタイルの人がいます。自力で、辞書を引きながら、英文の読解ができるのであれば、望ましいのですが、大抵の人は長続きしません。

 講義を聞くのが好きという人が、いらっしゃれば、そういう人に、この本は、ピッタりです。楽しいお話を聞いているうちに、英語に関する蘊蓄が、どんどん増大します。

 講義を聞くと、すぐ眠たくなる人には、この本は、向きません。なんとか、自分に適した方法をみつけてください。

 名講義を、一部、紹介します。まず、出だしの部分を、一部、省略して、引用します。

 Alice was beginning to get very tired of sitting by her sister on the bank, and of having nothing to do: once or twice she had peeped into the book her sister was reading, but it had no pictures or conversations in it. 'and what is the use of a book,' thought Alice, 'without pictures or conversation?'

 いきなり主人公の名前が登場します!およそ名作と言われる英文学作品のなかにあって冒頭からこのような事例は少ないようです。いかにインパクトが強いかが分かります。(中略)
 高校生が熟知している句 "get tired of" が最初から登場です。of の2回目のあともちゃんと同じ動名詞になっていますね。キャロルは母国の子どもたちにちゃんとした国語教育を授けたいという強い気持ちがあったのでしょう。『アリス』は全編を通じてこのような英語の適正な使い方が頻繁に例示されます。『アリス』はイギリスの国語の模範的な教科書的存在でもあるのです。
(中略)
 次にher sisterとは誰のことでしょうか。(中略) her sisterはお姉さんのロリーナです。なぜかと言いますと、自分がその膝元で本を読んでもらっているではありませんか。まさか妹に読んでもらっているとは考えられません。ボートでの川遊びをしていたのは1862年7月4日です。アリスの誕生日は1852年5月4日なので、実年齢は10歳になっています。妹は8歳でロリーナは13歳。
(中略)
そして「絵も会話もない本なんて何の役に立つのかしら」とアリスは「考えて」いるのです。実際に口に出さないところが「賢い」アリス (wise Alice) の面目躍如たる所以ですね。

 もう一か所、ご紹介します。

 It was all very well to say 'DRINK ME', but the wise little Alice was not going to do that in a hurry.
'No, I'll look first,' she said, 'and see whether it's marked "poison" or not';
for she had read several nice little histories about who had got burnt, and eaten up by wild beasts and other unpleasant things, all because・・・

 中身が安心して飲めるものとは限らないのでアリスは慎重な態度に出ます。さすがに 'the wise' little Alice ですね。Look は知覚 (percept) の、see は観念 (concept) の世界です。毒薬と書いていないかをよく見て確認するアリスです。なぜそうしたかというと、(続く英語は省略しますが)ほかの子どもたちが簡単な規則や約束事を守らなかったばかりに火傷したり、野獣やその他の見慣れない存在に食べられてしまった小話について本で読んでいたからです。

 本書は、242頁で、定価は、2000円+税です。
 もう一冊、実況中継:近代英語の精華『鏡の国のアリス』をPODとLDOCEで精読して行く!もあります。こちらは、316頁で、定価は、2500円+税 です。