思想とは真理に対する王手である

標題の文は、中島岳志さんが、100分de名著「オルテガ 大衆の反逆」の中で引用し、「私の好きな一文です」と述懐しているのですが、私は、翻訳文の場合は、原文ではどうなのかが気になります。

原文をチェックしようと、インターネットの世界を検索していて、吉田茂生さんの以下のページを見つけました。

http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/~yoshida/japanese/books/2019/ortega20190302.html

後のほうに「翻訳について」という章があり、そこで、王手についても解説されています。

原文は、スペイン語ですが、英訳があり、インターネットで読むことができ、以下のように訳されています。

An idea is a putting truth in checkmate.

あんまり上等な訳とは言えず、細かい所を議論したくないのですが、王手(check)ではなく、詰み(checkmate)という言葉が使われていますが、吉田さんの調べたスペイン語では、王手(jaque)なので、誤訳です。英訳だけチェックしていたら、判断を誤るところでした。

理念(思想)は、真理への王手であって、ちゃんと詰むように追っていかないと詰みませんよ。という大意は、間違いないようです。

中島さんの引用部分に対応する英訳部分を引用しておきます。

The "ideas" of the average man are not genuine ideas, nor is their possession culture.  An idea is a putting truth in checkmate.  Whoever wishes to have ideas must first prepare himself to desire truth and to accept the rules of the game imposed by it.

中島さんの本のまとめとしては、吉田さんのまとめが完璧なので、興味をもった人は、そちらを読んでください。